アメリカPh.D.生活雑記(1st Semester)

本記事は湧源クラブAdvent Calender 2019に参加しています。

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アメリカの大学院におけるPh.D.生活

アメリカの大学院の特色は本当に大学によって千差万別なので、自分の通う大学によって十人十色、必ずしも全く同じような生活になるわけではないということだけを留意してください。そのうえで海外大学院への留学に興味のある方にとってある程度有益な情報を共有できればと思い本ブログを開設しました。

また、そのうち研究関連の雑記とかもかければなと思います(開設時点ではどの程度開示してもいいのか不明なのでしばらくは技術の話はアップしないと思います)。

今回は大学院での生活を始めてからちょうど1学期経ったので時系列順に大学関連の話でもしてみようかと思います。もちろん大学生活とは関係ないアメリカでの生活についてもちょろっと触れます(最初のほうはがっつり触れていきますが)。

 

入学時の手続き等

私の通う大学院は通常のアメリカの大学院と比べて比較的早い時期に授業が始まります。そのため私は8月の中旬に渡米し、早期に入寮しました(といっても前の入居人が大挙していなかったり部屋がごみ部屋と化していたりした関係でしばらくごたごたしていましたが)。

アメリカについて真っ先に行うべきこととして

  1. 携帯電話番号契約
  2. 銀行口座開設

の二つが挙げられます。

私も例にもれずこの二つをとっとと行いました。その際日本から持参したiPhone6Sはsimロックが解除できない関係で新しいスマホを買う必要が出てきたためiPhone10を購入しました。

 さて、このスマホですが、購入した3日後に非常に運の悪いことにひったくられてしまいました。幸いけがはなかったのですが、心理的には非常につらかったです。

犯人の手口としては、二人組で後ろをつけてきて交差点で信号待ちをしている間に「今何時?」と聞いてきてスマホで確認しようと取り出したタイミングでひょいっととって爆速で逃げる、というものでした。アメリカでは誰かにつけられていないか確認をし、スマホは取り出さず常にポケットかカバンに隠さないといけないという教訓を得ました。またこれ以降携帯電話非保持の状態で10月まで過ごすこととなります(保険金受取の関係で)。

 

暗い話は置いておいて、入学直後は様々な手続きが待ち構えています。

寮に住むことになったのでポストキーを受け取ったり、大学の様々なネットサービスに登録したり、授業の履修登録をしたり、といったことです。

また、私は運の悪いことにTA(Teaching Assistant)にアサインされていたため(なぜ運が悪いかというと、私の所属するラボでは通常RA(Research Assistant)にアサインされるため)業務内容の確認、stipend受取に関する書類作業、SSN (Social Security Number)の発行など様々なことをする必要がありました。

さて、このSSNなのですが、日本とは大違いでアメリカの市役所というのは仕事をさぼるのが仕事なのか知らないのですが私の時は申請を行ってから実際に発行されるまでに2か月以上かかってしまいました(大分レアケースらしく手続きの手伝いをしてくれた大学の職員の方は非常に驚かれていましたが)。そのためStipendも2か月間支払われることなく危うく飢えかけましたが。

いろいろなこと(SSN発行、保険金受取、盗難被害に関する警察の調書等)がペンディングとなり非常に精神的に疲れましたがそうこうするうちに新学期の始まり。授業は3つ、英語のWritingを一つ(これはTOEFLのWritingのスコアが悪かったためmandatoryでした)と来年受けるQualのための要求科目2つを受講しました。

授業の内容は基本的には学部でやったことの焼き直し(学部が非常にレベルが高かったのと現在私の通う大学院のレベルがあまり高くないため焼き直しになってしまったのだと思います)といった感じで、とくには目新しいことはありませんでした。しかし、ここで基本的な数学(特に線形代数)の復習ができたのはよかったです。

今学期受講した授業は運よく課題はあまりなく(英語の授業はそれなりにがっつり課題あったのですが割愛します)中間試験と期末試験でほぼ成績が決まるみたいです。試験は一応数々の受験戦争を勝ち抜いてきた身としては信じられないくらいざるなのでいくらでもカンニングできてしまうなあという感想を抱いたくらいで内容は大差なかったです。

授業以外には主にTAの業務と研究をすることになります。

 

TAの業務

日本の大学でTAの業務というと、私の中では演習の授業で講師の先生のサポートを行い学生からの質問に答えたり、試験の時に答案用紙の配布・回収を行ったり、学生のレポートの採点を行うような業務を想像します。いずれの場合も各学期でせいぜい数回程度、給料も数千~数万円程度のものだと思います。

アメリカでのTAは主に3パターンあります。

まずレポートや試験の採点。これは日本と同じようなものだと思います。大きな違いは、レポートを提出する学生の数が100人単位であったり、毎週すさまじいページ数(10ページとか)のレポートを学生が提出してきたり、すこしでも変な減点をすると学生からなんで原点になったのかいちいちクレームが入るのできちんと対応をしなければならないことでしょうか。

次に授業を行うこと。残念ながら私の学科ではこの形態のTAを行っている人を見たことがないので詳しくは知らないのですが、大学によっては学生が先生と相談しながら「教科書のここからここまでを授業で教えて」といった塩梅に授業のカリキュラムに沿って講師をすることもあるみたいです。主に理学部に多い傾向にあるみたいです。

最後に実験を行うこと。私はこれをすることになりました。

実験をするといってもぴんと来ない方もいらっしゃると思うので私の行った業務内容について説明していきたいと思います。

私の担当した授業はMechanical Labという名前で、主にSolid Mechanicsに関連する実験をおこないました(あと数回だけControlも)。

毎週行うこととしては

  1. 大学のTechnicianに翌週の実験について説明を受け、実演してもらう
  2. Technicianの指導を受けながら実験の手順や概要についてすべて自分一人で実演及び説明できるようにする
  3. 実験の説明などを簡単にホワイトボードにまとめたりメールで事前に連絡しておく
  4. 実際の授業で説明および実演を行い、学生にも実験を自分たちでやらせてそれをサポートする
  5. 実験の最中によくわからなかったこと(手順に限らず理論的な背景も)を聞かれたら説明してあげる
  6. 学生の出欠を取り先生に報告

といった感じです。

4つ目と5つ目の内容だけ、毎日2.5h程度の授業時間内に学生たちに指導していくこととなります。つまり、毎週計12.5h + 準備時間で大体17時間前後がっつり仕事をすることになります。実験なのであまりどっかり座っていられないのもつらいところでしたが、一番大変だったのは毎週金曜日になると一応サポートをしてくれているTechnicianの方が休勤のため完全に一人で全て取り纏めないといけないことでした。それと、地味につらかったのは出欠の管理です。学生は基本的に自分本位なのでたまに出欠をごまかそうとしてきます。殺意の波動に目覚めないよう丁寧に対処しなければならないのが大変でした。それと、私のバックグラウンドはDynamicsやControlといったものなのですが、バックグラウンドが違うのにもかかわらずすべて英語で説明しなければならないというのもなかなか大変でした。

このように大変なTAの業務ですが、リターンも当然大きいです。毎学期授業料で$11,000程度かかるのですが(私の通う大学の授業料は段違いに安いのでこの程度ですが)これを全額免除にしてもらえ、かつStipendとして$7500(手取りは$6000程度)もらえることとなります。

 

研究

研究室に配属されてまず指導教官の先生に言われたのは「Udacityの移動ロボットのコース取れ」でした。まずは基礎的な知識をきちんと押さえてから研究に取り掛かれという話ですね。それが終わった後は今年卒業した先輩のD論を読み理解するフェーズが始まりました。それが完了した後、ボスからラボとして取り組んでいる研究トピックの概要とどのパートが完了しているのか、していないのか、といったリストが渡されました。そのうえで、まずは一番簡単なこのトピックから取り組んでみよう、と指示され取り組んでいるのが現状です。

もちろんこのほかにも先輩方の研究の手伝いをしたり、コーディングの手伝いをしたりしているのですが現状は取り組み始めたばかりなのでその話はまた今度にでも回したいと思います。

さて、この研究についてなのですが私は当初思ったよりもかなり束縛が強かったためとても驚きました。これはもちろん日本の大学でもそう大きくは変わらないのだと思うのですが、ファンドの関係からPh.D.の学生はそのラボにおける研究プロジェクトの労働力として期待されるのです。何を当たり前のことを、と思うかもしれませんが、私はその束縛の度合いが「大きな目標が決まっているが過程は基本的に学生のほうで決定できる」ものだと思っていました。実際には過程も含めてある程度はボスの要求に従って仕事をしていく必要があったわけです。幸いにして私は支持された内容にそこまで不安はなく、またすべてマイルストーンが指示されるわけではなくやはり部分部分は自分の裁量でどうにかできるため文句はないのですが。これは大学によってかなり違うみたいです。知人は逆に指導教官から一切指示されないためつらい、ということを言っていましたし、逆にすべて指示される方もいらっしゃるようです。この辺りは事前に進学先の研究室についてきちんと調べていないと陥りやすい事態のように思えます(私は運がよかったと思います)。

 

さて、ひとまず最初の学期の雑記はここらへんで筆をおきたいと思います。

来学期はRAにアサインされると先生に約束されているのでもうTAの業務で苦しむことはないと思うのですが、基本的には生活は今学期と様変わりすることはないと思います。学期の途中に締め切りのある学会論文を提出したいのでこの冬休みの間にどれだけ進捗を稼げるかが重要になってくるのでまた落ち着いたらRAだけの生活についても記事を書きたいと思います。

普通の理系学部生がアメリカ大学院留学を目指す話

※本記事は2018年にQiitaに投稿したもの

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を改めてはてなブログに移植したものです。特に加筆などは行っていません。

はじめに

まず簡単に自己紹介をすると、私は東大の機械工学科の学部生です。
本記事は機械系Advent Calendar2018の一環として執筆しています。

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本記事を読む読者の皆さんは「きっと筆者は前々からアメリカに留学したいと思っていて準備などさぞや入念にしてきたのだろう」と考えているかもしれません。
このような前置きを入れたということはつまりそうじゃないということです(少なくとも後半は)。

自分もほとんどの東大生がしたように夏に院試を受験しました。ほとんどの東大生と違ったことは、自分の専攻ではなく他学科、しかも無謀にも倍率が高くなかなか受かりにくいと定評のある学科を受けてしまったことです。
その結果院死しました。
アメリカ大学院の準備を始めたのは院死したことがわかった9月頭からとなります。
とはいえ出願準備を始めるまで全くアメリカの大学院留学を念頭に入れていなかったわけではありません。

日本の理系学生の留学パターンとしてよくあるのは修士を日本で取ってからPh.D.を海外で取るというパターンだと思います。
自分も同じような順序を想定した上でアメリカの大学院でPh.D.を取りたいとラボのボスに伝えました。
すると、ボスから「君の成績では今から出願しても院から出願しても多分結果は変わらないと思いますよ」と言われました。まあ私の成績はお世辞にもいいとは言えないようなものだったわけです。
そっかあと思った私は、院試が終わったらアメリカの大学院出願の準備を始めようと思いたち、ひとまず出願先の大学くらいは絞っておこうと思い調査しました。
だいたい100校ほどの大学院を虱潰しに調べたでしょうか。ものすごく時間がかかったことだけは覚えています。
その調査が終わったあとは院試の結果が出るまで特に他には出願の準備はしていませんでした(というより院試勉強をしていたのでできませんでした)。
その後院死を経て約3ヶ月で出願に必要な書類をすべて揃え、現在に至ったという具合です。

このような前提の下、本記事では普通の(なんなら院死してしまうくらい普通の人よりあまり試験が得意でない)理系学部生の自分がアメリカの大学院留学を志したわずか数ヶ月の過程で知った様々な知見を読者の皆さんと共有したいと思います。

本記事の構成は、以下のとおりです。

1. 米大学院出願に必要な書類等に関する話
2. 奨学金などのお金の話
3. おわりに

また、本記事の読者としては主に以下の層を対象として想定しています。

1. 現在理系学部(特に工学部)に在籍している学部3年生
2. 東大の機械系の学生(特にこれから修士課程に進学する人)
3. 院死してしまった同胞諸君

もちろん本記事がすべてのアメリカ大学院留学を検討する日本人理系大学生・大学院生の手助けになるのであればこの上ない喜びです。

出願に必要なもの

試験


日本と異なり海外の大学院の多くは大学ごとに試験を実施することはないみたいです。
その代わりに、全国共通の試験と、英語圏であれば英語能力を示すための試験のスコアが必要となります。
その中でも、日本人の学生がアメリカ大学院出願に際して受ける必要のある試験としては、GREとTOEFLが鉄板でしょう(というか、私はその2つを受けました)。
他にはGMATかIELTSという選択肢があると思います。

TOEFLについては本質的なことを書いている記事がたくさんあると思うのでここでは割愛します。
(ちなみに私は市販の本を使っての勉強しかしていませんし、点数もそこまで良くありませんでした)

GREは日本の大学受験で言うセンター試験のような位置づけで、GeneralとSubjectの二種類の試験があります。

Subjectは数学や物理などの専門分野に関する試験となっていて、学科によっては要求しているところもありますが、機械系や情報系は殆どの場合要求されないです(出願先の学科がSubjectを要求しているかはAdmission Requirementとかのページで見ることができます)。
Subjectについては試験会場が日本で数箇所しかないということもあるので、Subjectを受ける必要のある可能性のある方は早めに確認して試験の予約をしたほうが良いと思います。

Generalはほとんどの場合受ける必要のある試験で、Verbal(文法)、Quantitative(数学)、Analytical Writing(作文)の3つのセクションに分かれています。
作文以外のセクションはすべて選択肢をPC上でクリックしていくか数値を入力するような形式となっています。
各セクションの詳細な内容や対策についてはTOEFL同様他の記事に譲ります。

一応参考にしたサイトを挙げておくと、こことかは非常に参考になりました。

gre-taisaku.blogspot.com

 

このサイトで紹介されていた、Cracking the GRE(https://goo.gl/T7adHu)という本を私はGREの対策として使っていました。あとはGRE公式がタダでくれる模試二回分、そして単語帳くらいしか使っていません。
この本は本当に素晴らしくて、説明の英語が簡単、作文のテンプレートがバリエーション少なく載っているため迷わない(しかもどれも覚えやすい)、模試がたくさん入っているといった具合です。数学も作文も基本的にはこれさえやっておけば十分です(文法については単語暗記ゲーなので暗記苦手な自分は爆死しました)。
また、先述した公式の模試は絶対にやる必要があると思います。時間感覚や形式、キーボードの使い方など予行演習になります。

準備期間としては約一月ほどでしたが、この本と公式模試のおかげでいずれのセクションでも日本人平均以上は簡単に取れました(日本人平均が低すぎるのかもしれませんが)。

スコアの評価についてはまだ合否がわかっていないので結果が出てから更新したいと思います(この記事が生存していれば)。

SoP

次にSoP。
SoPとはStatement of Purposeの略で、自分が将来何やりたいか、これまで何やってきたか、それを埋めるために大学院で何をやる必要があるのか、などを書きながら自分を大学にアピールするためのエッセイです(名前は大学によってまちまちです)。

どういったコンテンツを含むべきなのかはいろいろなサイトで紹介されていますが、実際に受かった人のSoPを読むことが最も重要だと思います。ただし、ネットで簡単に見つかるのはたいてい人間やめているレベルで優秀な人達のものなので、そうでもない人も当然いることを念頭に入れておきましょう(精神を病みます)。

自分の興味のある分野でPh.D.の研究をできるだけの前提知識を持っていることをアピールするためには最低限いくつか実績を持っておく必要があると言われています。
例えばCMUのある学科なんかでは「いくらGPAが高くても研究したことのない人はPh.D.にほぼ確実に受からない」と明言しています。とにかく研究をしたことがあるかどうか(工学系なら開発でも良いかもしれませんが)はそれだけで下手をしたら合格を左右しかねない非常に重要なファクターです。
幸いなことに日本の工学部の多くは卒業論文を要求しているので研究をする機会があります。そこに「自分はPh.D.を取りたいです」という宣言が加われば、多くの場合実績づくりに先生が前向きに手伝ってくださります。私の場合は出願前の段階で第二著者で学会発表、第一著者の論文提出までさせてもらいました(論文は無事にアクセプトされました)。
こういったアカデミックな実績がなくても、インターン、ハッカソン、ロボコンなどの各種大会、更には大学の演習の授業なども十分アピールできると思います。とにかく、自分のしたいことを達成するために自分がしてきたことを効果的にアピールできれば題材は何でも良いということです。

SoPの添削はアメリカの大学院に行っている人、ラボのボス、ネイティブの三人くらいにしてもらうのが良いと某著名人が述べていますが、それはそのとおりだと思います。
でもアメリカの大学院に行っている知人もネイティブの知人もなかなかいないなあと思ったそこの貴方、知人を二人くらい挟めばどんな人間とも繋がれます。私はアメリカの大学院に通っている知人とラボのボスの他に、母方の祖母のおばあちゃん友達の娘さんのご子息の彼女さんとその彼女さんの友達の計4人に添削してもらいました。最後の二人など他人も良いところです。
そこまで無理をしなくても有料の添削サービスなどもあります。
文章を書く上で、自分には当たり前でも他人にとってはそうではない部分というのはたくさんあります。自分以外の第三者の目を通して、そういった部分の指摘をしてもらったり、全体の論理構成についてチェックしてもらえればSoPの質は劇的に向上します。積極的に他人に見てもらったほうが良いです。
そういった添削にかかる時間も考えてSoPの完成まで一月くらいは時間を見積もった方が良いです。

最後に、SoPのスタイルについて簡単に触れて終わりにします。
私はWordでSoPの作成を行ったのでWordでのスタイルについて説明します。フォントについては指定がない場合はTimes New RomanやArialなどの西洋式のフォントであれば基本的に何でも良いです。サイズは10-12ptsくらいでしょうか。
そしてこれが最も日本人にとって謎なsingle-spacedとdouble-spaced。知恵袋などの記事を調べると「行間1行がsingle-spacedだ」と主張している記事が多く見つかりますが真っ赤な嘘です。アメリカでhogehoge-spacedというのは、hogehoge行分の空間に一行の文章が記されているということを表しています。具体的には、single-spacedが行間0ptsとなりdouble-spacedは行間一行となります。
その他ページ数やヘッダーフッターなどは指定がない場合は特に気にする必要はないです。好きに書きましょう。

推薦状


アメリカの大学院出願には大抵の場合最低3通の推薦状が必要となります。日本の理系学生であれば大学四年のときから研究室に配属され、その研究室の教授や准教授から推薦状をもらえる可能性が高いです。先生方には早めに相談をしておくと良いでしょう(突然お願いした場合、推薦状を書く時間を取ってもらえなかったり、どんな推薦状を書いてほしいのか簡単にまとめておいてほしいと言われてあたふたしてしまう場合があります)。

研究室に先生が2人、もしくは1人しか先生がいない場合もあります。その場合は研究室外の人にお願いする必要があります。インターン先の企業の人、サークルの顧問の先生、受講していた授業の先生、その他いろいろなつながりが利用できると思います。そういったつながりが一切ない場合は学科長の先生に相談しても良いかもしれません。

しかし、これだけは覚えておいてください。関係性が希薄な先生からは大した推薦状をもらえません。これはどんな留学系の記事にも書いてありますし、経験からも絶対にそうだと言えます。しっかりとした推薦状をもらえるよう、いろいろな経験をしたほうが良いです(ゼミに参加したり、講演会の懇親会に参加したり、いろいろと考えられます)。

また、推薦状を先生方に書いてもらう際、日本の先生の場合下書きを書くように言われる可能性があります。
下書きと言っても、多少直すだけでそのまま出すのか、下地にはするが大幅に修正するのかは先生にもよります。いずれにせよ、ある程度自分で推薦状を書く必要があるので、何かしら参考にする必要があります。
私は主にこのサイト

iwasakiichiro.info

とこの本(https://www.amazon.co.jp/Graduate-Admissions-Essays-Fourth-School/dp/1607743213)を参考にして推薦状の下書きを書きました。
推薦状の執筆作業は精神衛生上よくないのでサクッと済ませましょう(私は一週間ぐらいツイッターが荒れてしまいました)。

その他


その他要求されるものとしてはCV、成績証明書、その他エッセイなどがあります。
成績証明書は大学が公式に発行してくれるものの英語版をスキャンしてアップロードすればよいというものがほとんどです(東大の場合証明書発行機から入手できます)。
CVについては先輩のフォーマットをもらってそれを修正する形で作成しました。
その他の提出書類については大学によってかなり変わってくるので、ここでは割愛します。
必須ではないが提出できる書類について。海外の大学院ではAdmission Committeeには人材選考が専門の人や大学の教授陣が参加し、内容については想像以上にしっかり確認してもらうことができます。そのため、こういった書類上でのアピールをフルに活用することは非常に重要です。必須ではない書類もきちんと提出することでしっかりアピールしたほうが良いです(当たり前ですが)。

お金の話


続きまして、お金の話です。
ここまで私はほんの数ヶ月でもアメリカ大学院出願に必要な書類やスコアは入手できるよ、というようなことを書いてきました。
しかし、ほんの数ヶ月ではどうにもならなかったものがあります。
それは、そう、お金です。

アメリカの大学院に進学する際、学生に支払能力があるかどうかを確認するための書類の提出が求められます。
ここでは奨学金でも親のお金でも借金でもなんでもいいので、とにかく大学にお金を払うことができるかどうかが聞かれます。払えない人は入学できません。せっかくいい大学に受かっても、門前払いを食らってしまいます。
このように門前払いをくらわないため、アメリカの大学院に進学する学生たちは苦心してお金を集めます。
日本人留学生がお金を用意する手段としては、以下のような選択肢が考えられます。

1. 親のお金
2. 日本の財団の奨学金
3. 日本政府や企業の奨学金
4. 出願先大学院の奨学金
5. 学生ローン

1.については富めるものの特権ですが、ほとんどの学生の場合当てはまらないでしょう(当然私も当てはまりません)。
多くの日本人留学生の場合2.と3.の選択肢を狙うこととなります。
奨学金を持っていれば、大学院側が奨学金を支払う必要がないということで合否の審査に有利になる場合もありますし、奨学金の書類審査などある程度厳しい戦いを勝ち抜いてきているという証左にもなります。
5.の学生ローンという借金地獄に陥らないため、また合否を有利にするため、私も多くの大学院留学を考えている学生同様国内の奨学金に応募しようと思いました。

遅すぎました。

ここでも私はマイノリティ側になってしまいました。
ほとんどの奨学金の場合、通常8月には書類申請が締切となり、11月頃に給付者を決定するみたいです。有名どころの奨学金はどこも早かったわけです。この点が数ヶ月で出願作業を終わらせようとしたツケでしょうか。
私が認知している限りでは12月時点で間に合う奨学金は孫さんの財団くらいでしょうか(しかしこちらも毎年財団生を募集しているか不透明なところがあるため、あまり期待はできないと言った具合です)。

さて、1.2.3.いずれの選択肢も取れなかった場合どのような選択肢が残されているのでしょうか?
おとなしく学生ローンを借りて借金沼にハマるのか、それとも海外留学そのものを諦めてしまうのか…。
個人的にはここで2つの選択肢があると考えています。

まず1つ目の選択肢は、ここまで触れてこなかった4.の大学院の奨学金です。
アメリカの大学院の場合通常Financial Aidに関するページが大学のHPに存在します。
そのページを見てみると、大学側が提供している、または斡旋している各種奨学金情報が記載されています。
大学院が提供する奨学金は主に二種類存在していて、早めの出願によってfellowship considerationの対象となり合格通知時にその結果を教えてもらうようなもの、または別途応募する必要のあるものの2つです。
これらの結果を待ち、奨学金がもらえるかどうかを確認してから海外の大学院を諦めるのか決めるのでも全く遅くないと思います。
仮に奨学金がもらえなくとも、各大学院と交渉及び相談してどうにかお金の工面ができるという噂も聞いたことあります(あくまで噂レベルでしか聞いたことがない話なので、本当のことを知っている人がいたら教えていただきたいです)。

2つ目の選択肢は、一年目を借金して二年目以降で奨学金を獲得することです。
この場合、一年目は学生ローンか親御さんの協力が不可欠となります。
多くの場合、アメリカの大学院では在籍2年目以降の学生を対象にRAやTAといった雇用が行われます(初年次から雇用を行う場合もあります)。
こういった雇用や、いい成績を収めた学生に対して与えられる奨学金を二年目以降に狙っていったり、各大学のFinancial Aid Officeに行き相談してそれまで知らなかった奨学金に新たに応募するといった事も考えられます。
とにかく、一度行ってしまえばなんとかなるんじゃないのか?という発想です。
とはいえ、この選択肢は非常に高いリスクを伴うためあまりおすすめしません。
二年目以降に奨学金が取れる保障はありませんし、下手したら大学院中退か借金沼です。
よほどレベルの高い大学にたまたま受かってどうしても行きたいというのであれば止めません。頑張ってください(あるいは私自身この選択肢を取る可能性が現段階ではまだあるのですが)。
将来高給取りになって数年で全額返せるという自信がある場合はそんなものは幻想なので諦めましょう。

おわりに


ここまでいろいろとアメリカ大学院出願に関するアレコレを書いてきましたが、いかがでしたでしょうか。

アメリカ大学院留学は不透明だからあまりしたくない。国内の奨学金が得られなかったから留学を諦める。海外留学ってめちゃくちゃ優秀な人とか文系(MBAとか)留学ばかりだから自分には関係ない。などなど、海外留学に関するネガティブな話を私はこれまでたくさん聞いてきました。
そのたびに知らないだけで諦めるのは本当にもったいないな、という気持ちでいっぱいになりました。

奨学金が取れなかった、成績があまり良くはなかった、英語が苦手、そのような理由だけで海外留学を諦めるのは早計に思われます。とあるサイトで海外の大学院にこんなスペックで受かっただの落ちただの書いてあるものがあります。その情報が正しいかはわかりませんが、中には成績も研究実績(論文の本数という意味で)も試験のスコアも大したことがなくても、とても良い推薦状が得られたため受かることができたとありました。
日本の大学院入試とは異なり、アメリカの大学院はどのような基準で合格できるのかは一切わかりません。もしかすると特にガイドラインはないのかもしれません。だとすれば、良いSoPを書き、良い推薦状を手に入れられれば、そこに活路を見いだせるかもしれません。
私自身この記事を執筆している現在は合否の結果が出ているわけではありませんが、アメリカの大学院の合格基準の柔軟性を信じてアメリカ大学院出願作業を現在せっせとこなしています。
そしてどのような結果になろうともどこかの大学には受かっていると信じていますし、その中のいずれかに進学することとなると思います。
(とはいえここまで私が楽観的なことばかり書いているのは本記事を執筆時点ではまだ出願先の合否結果が出ていないためかもしれません。
数カ月後の自分は、なんて自分は楽観的であったのだろうかと嘆いているかもしれません。)

この先一生どうしても日本じゃないと嫌だという確固たる理由がないのであれば、海外留学には多くのメリットがあると思います(お金とか機会とかの面で)。
海外留学そのものだけでなく、出願作業だけでも、これまで自分がしてきたこと、この先自分がしたいこと、現在の自分の武器などを整理することでいろいろと見えてくるものがあると思います。

みなさんもこれを機に、少し海外大学院留学を検討してみてはいかがでしょうか?

追記(8/8)


この記事を書いた後、無事に米大学院への進学が決まったので新たに知った情報をいくつか追記したいと思います。

米大学院の選考基準に成績が与える影響

実際に米大学院で学生の受け入れ選考を行っていた方に話を伺う機会がありました。その際、大学での成績がどの程度選考に影響するのか、学部の成績があまりぱっとしなくても修士で取り戻せば何とかなるのか、ということを聞きました。
結論から言うと、成績はやはり絶大な影響を与えますし、学部の成績が振るわない場合は非常に不利になるそうです。
後者について、海外の大学院に出願する人は多くの場合修士の成績を良くしてくるため差がつかず、結局学部の成績を見て判断することが多いそうです。
従って、学部の成績を良くすることがアメリカの超一流大学に受かるための必須条件と言えるかもしれません。

 

お金について

私は合格した大学院でTAの業務を行うことになりました。このTAの給料により、授業料免除及び給料として相当な額のお金を大学からもらえることになりました。とはいえ、初年次ということもあり大学から支給される金額がそれだけで生活を全て賄うには若干不足していたため、多少親から援助をしてもらうことになりました(日本の国立大の授業料よりは少ないくらいの額)。
時期の関係で奨学金は何も獲得できませんでしたが、このようにPh.D.コースに合格してしまえば大学からかなりの補助が出ることが多いそうです。
ただし、大学によってはTAやRAの質を維持するために1年目の学生はアサインしないという取り決めがある場合もあるので(超一流大学はこの傾向にあるみたいです)そのあたりは大学によってまちまちのようです。